撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

『シング・ストリート 未来へのうた』(ジョン・カーニー)

(ネタバレあり)

──自伝的な物語なのですか?
監督:自分自身を反映した作品を作りたかった。ただの音楽の物語にはしたくなかったんだ。映画では基本的に、僕が主人公の年頃にやりたかったけれどできなかった全てのことを映画の中で実現した願望充足の映画なんだ。

『シング・ストリート 未来へのうた』ジョン・カーニー監督インタビュー




”Drive It Like You Stole It”のMV撮影シーンで、コナー(フェルディア・ウォルシュ・ピーロ)は「やりたかったけれどできなかった全てのこと」を妄想する。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(ロバート・ゼメキス)でのプロムのシーンのような、そこにラフィナ(ルーシー・ボイントン)も現れて……しかし一方で、そこで撮影されたであろう、やりたかったことができなかった、ラフィナの現れないMV、つまり思うようにはいかない現実は、我々観客の目からは奪われている。
その理想と現実の距離があるから(しかもその一方の現実は観客が推しはかるしかないから)感動させられる。

そしてラスト近くのステージ。
”Drive It Like You Stole It”のMV撮影シーンで「やりたかったけれどできなかった」ことをここで、全てではないにしろ、妄想ではなく等身大の彼らに実現させている。妄想シーンが描いた理想とは異なり、家族も来ないし、校長も踊らない、それでもラフィナはやってくる。
ここでも理想と現実の距離があり(一方の理想である妄想シーンは観客が思い返すしかない)、しかも観客が察した”Drive It Like You Stole It”のMV撮影当時のしょぼい現実と、現在の理想に少し近づいた現実との距離があるから感動させられる。

監督のジョン・カーニーが「主人公の年頃にやりたかったけれどできなかった全てのことを映画の中で実現した」のは、”Drive It Like You Stole It”のMV撮影の妄想シーンにちがいない。監督にとっての個人的な「願望充足」はここで終わっている。しかしそこに如上の(観客に負荷を与える)距離を導入することで「自分自身を反映した作品」という個人的な願望を、普遍的な「願望充足」の物語に昇華させている。
スポンサーサイト

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2016/07/22(金) 21:34:05|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド) | ホーム | 『エヴェレスト 神々の山嶺』(平山秀幸)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/350-c7d6dbbd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。