撮影監督の映画批評

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『リリーのすべて』(トム・フーパー)

(ネタバレ注意)


アイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)が、妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)とともにリリーを発見し、受け入れていく前半が見事。
主人公にフリをさせて、当初はフリのはずだったものが「いつのまにか」本当になるのである。

アイナーは、モデルとして女性のフリをさせられる。そこで「フリのはずが……」という描写が重ねられるのだが、まだアイナーにその自覚はない。つまり、まず主人公よりも先に観客が知るのである。

決定的なのはアイナーがゲルダの下着を身につけたこと。秀逸なのは、ゲルダがそれに気づく瞬間をアイナーと対面させていないので、お互いがどんな表情をしているか見ることができない(が、観客は見ることができる)点である。
ゲルダは、何かがおかしいと感じたはずであるが、そんなわけはない、これはゲームなのだ、とゲームに乗るフリをする。逆にアイナーは、ゲルダのリアクションを覚悟していたはずだが、ゲームなんでしょというゲルダに、そう、これはゲームなのだ、と自分に言い聞かせるようにフリを続ける。
もちろん、この時点で二人は知ってしまっているのだが、知らないフリを続け、自らを欺く。しかし同時にそれが続かないであろうことも知ってしまったのだ。

知ってしまった方のゲルダは、その晩一人起き抜けアイナーをスケッチしながら、そこにリリーを描いてしまう。
知ってしまった方のアイナーは、次の朝そのスケッチにリリーを見てしまうのである。

「いつのまにか」フリが本当になってしまったことに気づくためには、その自分を外から見る視点が必要なのだ。

だから、パーティーでのアイナーとヘンリク(ベン・ウィショー)のキスは、ゲルダに見られなければならない。
そして、ここまでゲルダの視点を借りてリリーを見ていたアイナーは、ついに自らの目でリリーを見るため鏡の前に立つ。同時にゲルダも、絵の中のリリーを完成させることで、アイナーを殺しリリーを現前させる。

と、ここまではパーフェクトな出来だと思ったのだが、ここから先がどうにも乗れなかった。リリーの絵が世間に認められていく過程と、アイナーがリリーとして存在しようとする過程が並行するのはいいとして、二人のその後が伝記映画にすぎないものになってしまっているのが残念だ。前半の、あのフリと知りつつフリをしあう二人の痛々しさが鮮烈だっただけに。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2016/03/29(火) 14:48:39|
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著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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