撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#4

前回『ディア・ハンター』(マイケル・チミノ)のカットバックの解説で使用した図をもう一度。

SRS#

ここでのキャメラのナンバーは便宜的にふったものなので、マルチキャメラのナンバーではない。このシーンが何台のキャメラで撮影されたかは知らないが、もし一台のキャメラで撮影されたのであれば、間違いなくナンバーの順番に撮影されていったであろうナンバーである。
ここでなぜ#2のあとに#4へ行かず、先に#3のポジションに行くのか?
その答えに、映画ではマルチキャメラが限定的にしか使用できない理由がある。
『L.A.コンフィデンシャル』(カーティス・ハンソン)、ラストのカットバックを見てみよう。

la1.pngla2.png

この角度であれば2カット同時に撮影しても、それぞれのカットにもう一台のキャメラが映り込むことはない。しかし、そうは撮られていない。
見てのとおりライティングが異なるからだ。エド(ガイ・ピアース)越しのリン(キム・ベイシンガー)のカットは、リンに逆光があたっていて彼女のブロンドがハイライトで縁取られている。しかし、そのリバースショットであるリン越しのエドでは逆に、エドに逆光があたっている。
もちろんこれはリンのブロンドを美しく見せるためである。リンのバックの人物には順光(太陽光)があたっているので、この逆光はライティングされたものである。これをもしこのまま2キャメで撮影すると、リバースショットのリン越しのエドは、エドよりもリンの後頭部が光り輝いて目も当てられないことになるだろう。だからそうならないよう切り返してもまたリンのブロンドがハイライトに縁取られるようライトの位置が変えられている。
それでも2キャメで撮るというなら、どちらのカットも許容できるフラットで退屈なライティングにするしかない。

ライティングだけではない。例えばリン越しのエドのカットが、果たして同じ場所で撮られているかどうか、われわれにはわからないのだ。
もしエドのバックに見せたくない、しかも移動できないようなもの(例えば電柱、下図参照)があったとして、それがバックに入らない位置まで、キャメラと被写体の関係位置はそのままで、(平行/ピボット)移動しているかもしれない。
それどころか、たとえそれが別場所であっても、われわれにはわからないのだ。つまり1キャメで構図逆構図の位置関係さえ崩さなければ、逆構図の背景を自由に選ぶことが出来る。
それでも2キャメで撮るというなら、どちらのバックも満足できる場所を探すか、妥協するほかない。


lac.pnglac#2


一見つながりそうにもない、このような改変が、全く違和感なくつながれるのが映画である。むしろリアルにつなげられたものの方が、そのつながりが弱い。なぜなら、フラットなライティングや整理されていない背景では、被写体が背景から際立たない。そうすると自ずとそれら被写体同士、カット同士のつながり(イマジナリーライン)も際立たなくなるからだ。

見せるべきは、被写体同士を結ぶ見えることのない関係性の線(イマジナリーライン)である。

このようにライティング、あるいは背景を考えると、等方向のセットアップをまとめて撮影するべきだとわかる。最初の問いに戻ると、それゆえ#2の撮影後は#4ではなく、等方向の#3を撮影するべきなのだ。
その際、それぞれのレンズ、ディスタンス、角度を記録しておくべきなのは言うまでもない。

スポンサーサイト
  1. 2015/08/31(月) 20:19:44|
  2. 演出
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#5 | ホーム | 「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#3>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/330-02979056
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。