撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#3

今回はまず、会話シーンでよく見られるカットバック(切り返し/構図逆構図/Shot reverse shot)について解説する。
『ディア・ハンター』(マイケル・チミノ)から有名なロシアンルーレットのシーン。
手のヨリなど2、3カットインはあるが、基本的には以下の5つのセットアップで構成されている。

DH1.pngSRS#


dh2.pngDH4.png
DH3.pngdh5.png

CAM#1から撮られるのは、引き画/状況説明カット/エスタブリングショットと言われるもの。
CAM#2とCAM#4、CAM#3とCAM#5のペアが、構図逆構図とも言われる教科書的なカットバックである。鏡に映したかのような構図で交互につながれている。
では、このような構図逆構図を撮影するにはどうすればいいか。
1)レンズ
構図、逆構図ともに同じ焦点距離のレンズを使用する。
2)ディスタンス
構図、逆構図ともに被写体までの距離を同じにする。
3)角度
ここでマイケル(ロバート・デ・ニーロ)とニック(クリストファー・ウォーケン)の二人を結ぶ線(視線)をイマジナリーライン(想像上の線)と呼ぶ。図上では点線で示されるイマジナリーラインと、キャメラの光軸がつくる角度を、構図、逆構図とも同じにする。

以上、3点をそろえれば、正確な構図逆構図を得ることができる。

次にCAM#1、CAM#2、CAM#3を比べてみると、キャメラ(光軸)がイマジナリーライン(視線)に近づくにつれて、被写体のサイズが大きくなっているのがわかる。
会話シーンを引き画ではじめ、会話の内容が核心に近づくにつれ被写体のサイズが大きくなり、その正面にまわりこんでいくのがセオリーである。

一般にキャメラ(光軸)とイマジナリーライン(視線)がつくる角度が、垂直に近く横位置に近いほどより客観的、イマジナリーラインに近く縦位置に近いほどより主観的とされる。キャメラが登場人物の視線(イマジナリーライン)に近づくのだから、それが主観性を帯びるのは当然のことだ。もしキャメラの光軸がぴったりイマジナリーライン(視線)に重なれば、それは見た目、Ponit Of Viewと呼ばれる主観ショットになる。

角度とサイズが、主観と客観の度合いを計る重要なファクターである。

ゆえに次のような表現が可能になる。
『ファミリー・プロット 』(アルフレッド・ヒッチコック)
宝石店で、店主と客を装い密談するアーサー(ウィリアム・ディヴェイン)とフラン(カレン・ブラック)

FP1.pngFP.png


FP2.pngFP3.png
FP4.pngFP5.png

完全プロフィールのカットバックと、完全正面のカットバックで構成されている。ちなみに完全正面ではあっても完全なキャメラ目線(光軸=視軸)ではないので、見た目ではない。この場合俳優はレンズのやや上を見るように指示されている。
ヒッチコックは、店主と客を装う表向きの会話をプロフィールのカットバックで、他聞をはばかる話を正面のカットバックでと描き分けている。疎外された客観的な視点と、登場人物の主観に寄り添った視点を自在に使い分けているのだ。

構図逆構図でカットバックすることは、われわれが見ることのできないイマジナリーライン(視線)が、そこにあることを含意する。
であるから逆にないはずのイマジナリーラインだけで、全く関係のないカット同士をもつなぐことができる。次の動画がそうだ。



ここでのイマジナリーラインはボールの動線であるが、そのイマジナリーラインに対して構図逆構図になるよう入念にキャメラの角度がそろえられているのがわかる。逆にそうしなければつながりづらいからだ。

以上のようなことからカットバックのなかでも構図逆構図は、イマジナリーライン/関係性を強く観客に感じさせることができる。それゆえマイケルとニックの間に走る友情というイマジナリーラインを見せるには、構図逆構図で描くほかないのである。


スポンサーサイト
  1. 2015/08/30(日) 23:31:52|
  2. 演出
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#4 | ホーム | 「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#2>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/329-f4f81c65
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。