撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「日本のいちばん長い日」(原田真人)

(ネタバレしています)

岡本喜八監督の昭和版を世評ほどは評価していないのだが、今回の平成版を観てやっぱりよくできていたのだなぁと考えをあらためた。決して平成版が悪いわけではないのだが。

そもそもそのタイトルが『史上最大の作戦』の原題The Longest Day から採られているように、旧作の英題はJapan's Longest Dayであるが、平成版にはThe Emperor In Augustの英題が冠されている。
この違いがそのまま内容の違いになっていて、旧作では後ろ姿や部分、ロングショットなどで直接描かれなかった昭和天皇が平成版では主要キャストとして描かれている。

もちろん1967年当時は天皇を正面から描けないという苦労もあったでしょうし、これはいつか誰かが別の形で描かないと駄目だなと思っていました。

でも、戦後50年の区切りのときに出るだろうと思ったら出なかった(笑)。60年になっても出なかった。そうこうしているうちに、2006年、昭和天皇が主役の映画『太陽』(アレクサンドル・ソクーロフ監督、イッセー尾形主演、露・伊・仏・スイス合作)が日本でも公開されたんですよ。

ただ、僕はイッセー尾形さんが演じた昭和天皇は"違うな"と思ったんです。昭和天皇の形態模写をしたことが話題になったけれど、本来は2時間という枠の中では、天皇の風格、ある種の神がかり的な部分を描かなければいけないんじゃないかと思っていたし、畏敬の念があったらそんなことはできないだろうと。あの時点から完全に、自分がやらなければいけない、という気持ちになっていました。

映画『日本のいちばん長い日』原田眞人監督インタビュー

旧作の前半は、諸々がなかなか決まらない様が伝言ゲームになって、それを逐一丁寧に描写することで長さを演出し、後半は一転して玉音盤がいわばマクガフィンとなって、その争奪戦が描かれる。そしてその間、昭和天皇の顔が映し出されることはない。そのかわりに頻繁に顔を出すのが、時計の文字盤なのだ。天皇の不在を埋めるように時計の文字盤と、玉音盤が、映画を駆動させる。
なるほど、時代がそのような描写を要請したのかもしれないが、結果不在であるがゆえに平成版や『太陽』より「天皇の風格、ある種の神がかり的な部分」が描けていたように思われる。
消極的な手法に思われた不在が、積極的な実在より力を持つということ。

原田監督に「畏敬の念」があり、だからそこまで積極的にはできなかったのか、その意図に反して昭和天皇(本木雅弘)の描写はつつましい。エピソードは描かれるが、やはりよりフォーカスされるのはその家族を描かれた阿南惟幾(役所広司)になる。
阿南がもう帰ってこないことを知っている妻が、電話をかけてきた娘の何気ない一言でそれを再認識させられる。気づかないフリをしていたが、気づいてしまったのだ。その電話のせいで当の阿南からの電話に出られないことを知るのは観客だけ。この登場人物たち、そして観客との距離感がすばらしい。

エンターテイメントを真面目な題材で描写した昭和版と、真面目な人間ドラマに、息抜きのような描写をところどころ配した平成版。
旧作は基本エンターテイメントなので人物描写は生真面目であってかまわない。そうでなければ玉音盤がマクガフィンにすぎないことがばれてしまう。しかし平成版は人間ドラマにシフトした御陰で、題材が題材なだけに息抜きがほしくなってしまったのではないだろうか。その差を体現するのがそれぞれ佐々木武雄大尉を演じた天本英世と松山ケンイチである。
バランスをとるはずのキャラクターがバランスを崩してしまったように思われた。
スポンサーサイト

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

  1. 2015/08/16(日) 03:37:29|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「いつのまにか」の描き方 映画技法の構造分析 番外編#1 | ホーム | ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション(クリストファー・マッカリー)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/326-ecfc6059
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。