撮影監督の映画批評

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「キャプテン・フィリップス」(ポール・グリーングラス)

トム・ハンクスはどうも苦手な俳優なのだけれど、これはよかった。
感心した点を3つほど。
冒頭、リチャード・フィリップス(トム・ハンクス)が妻を伴い家を出るのだが、その車の発進をあろうことかポール・グリーングラスは、無人のはずの家の中からガラス窓越しにとらえる。ほんの短いカットでしかないのだけれど、そこに確かな演出を垣間みることができる。予兆としてのカット。いつもと変わらないはずの出発が、不吉な距離感を隔ててとらえられる。二度と戻って来れないかのような...はたしてどれだけの監督がここでこのような視点に入ることができるだろうか。

2つ目は、他の2つに比べると感心の度合いはさほどでもないのだけれど、海賊側に足を怪我した若者を配している点。フィリップスに同情的でありながら、何もできないキャラクターである彼は、我々観客の似姿であり、観客を映画内に係留するアンカーとしてある。その場にいるような臨場感は、3Dでなくとも、劇中の視点を介して容易に達成することができる。観客席に立体感を持った映像を届けずとも、観客から映画の中に入ってきてくれる。
ちなみにリメイク版「キャリー」(キンバリー・ピアース)がデ・パルマのオリジナルより優れていると思った点もそれで、オリジナルではみんなと一緒にシャワールームでキャリーの初潮をからかうスーが、リメイクでは明らかに戸惑いの表情を浮かべ、しかし助けることなどできず、ただ見ることしかできないというキャラクターに改変されている。

3つ目は、ラストのトム・ハンクスの名演。わめき散らす海賊らとコントラストをなすように、冷静にふるまってきたフィリップスだが、最後にその緊張がとぎれる。ここまではよくあるパターンなのだが、この後救出されたフィリップスが、女医に診察されるシーンが秀逸。
もちろんトム・ハンクスの名演なのではあるが、名演たらしめているのが女医の
至極冷静な対応である。この遅れてきた悲哀は、「ジョゼと虎と魚たち」(犬童一心)の妻夫木聡が、ラスト幹線道路脇という最も叙情的な風景から遠い背景で襲われるものと同じである。
女医の感情を排した物言いが、逆にフィリップスの抑えていたはずの感情を解放させる。たとえばここで家族に再会させるようなシーンだったとしたらどうだろうか、きっと目も当てられないだろう。
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  1. 2013/12/12(木) 01:13:48|
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Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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