撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「ブルーバレンタイン」(デレク・シアンフランセ)

 評判は知りつつも劇場で見逃して、DVDにて。REDで撮影された現在部分と、Super16で撮影された回想部分の差異もDVDではさしてわからず劇場で観なかったことを後悔。

(ネタバレあり)
 犬に"Love-A-Lot"と名前を付けたのは「愛のそよ風」(クリント・イーストウッド)だが、いなくなるのを夫ディーン(ライアン・ゴズリング)が先に知り、その死を妻シンディ(ミシェル・ウィリアムス)がみつけ、そしてそれをより悲しみ嘆くのはディーンだという本作の犬は、それだけでこれから描かれる2人の"Love"を先取りしている。

 最初の回想シーンで、老人の部屋から出て来たディーンは、その戸口で何かを見て立ち止まる。その何かを見ているディーンの顔に、現在のシンディのクロースアップを繋げ回想あけとしているのだ。その現在のシンディは、庭で犬(Love)を埋めるディーンを見ている。つまりここでは過去のディーンが何を見て立ち止まったのかはわからない。

 それがわかるのは、後のシンディに寄り添った回想シーン。シンディは祖母の部屋のドアを閉めようとして、廊下を挟んだ対面の部屋からディーンが出てくるのを見る。それは我々観客が最初の回想ですでに見ているディーンだ。つまり老人の部屋を出たディーンが見たのは、シンディだったのだとここで初めてわかる。

 都合二度繰り返されるディーンのまなざしの先は、
1)犬(Love)を埋めるディーンを見るシンディ(現在)
2)一目惚れするディーンを見るシンディ(過去)
 
 一目惚れしたというディーンが、同時に主張するのが、以前にも彼女を知っていたような気がするということ。これを聞いて我々観客は居心地がわるくなる。なぜなら我々は、ディーンがシンディに出会う回想の以前に、すでに結婚数年後の2人を見せられているからだ。つまり彼女を知っていたような気がするという以前が、結婚数年後の現在を指しているような倒錯した感覚に陥る。

 一目惚れ"Love at first sight"であるはずのまなざしには、同時にその"Love"の埋葬も折り込まれている。映画は現在と過去を交互に描いていき、一目惚れは結婚に、犬/"Love"の死は離婚に形を変える。
 しかし"Love at first sight"が"Love"の死に、結婚が離婚に形を変えるのではない。それらは相互に折り込み済みであって、視点の相違でしかないのだ。

 朝の8時から飲むような(情けない)仕事なのか、それとも朝の8時から飲める(ぜいたくな)仕事なのか。ここにあるのは視点の相違でしかない。(例えば、山中貞雄の「河内山宗俊」にも次のようなセリフがある。「なんだ、お前片足が短けえな」「馬鹿野郎、ほんの片足が長いだけだ」)

 恋愛とは男と女が出会うのではない。出会いと別れが出会うのだ。
 
スポンサーサイト
  1. 2011/11/08(火) 20:30:00|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「カーネーション」第7週「移りゆく日々」(第42話) | ホーム | 「未来を生きる君たちへ」(スザンネ・ビア)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/317-6e8257ca
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。