撮影監督の映画批評

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「ロスト・アイズ」(ギリェム・モラレス)

<ネタバレあり>
 フリア(ベレン・ルエダ)の視力は、劇中徐々に失われていく。であるから完全に盲目になるまでの描写には、そのPOVショットを用いることができる。視野狭窄を模するかのようにキャメラはフリアに寄り添い、客観的なカットは抑えられる。
 POVショットは、その主を隠す。であるから一人称映画(「湖中の女」、「視線のエロス」)は、鏡を使ってその主を見せるのだし、ヒッチコックは、POVショットとその主をとらえた画を交互に編集する(サブジェクティブトリートメント)。もちろんフリアのPOVショットは、ヒッチコックと同様、フリアをとらえる画と交互に編集される。
 しかし「ロスト・アイズ」のPOVショットはフリアのみならず、宿の雑用係の老人を殺しその場を立ち去る犯人にも施される。その際当然のことながら、交互編集のサブジェクティブトリートメントはなされない。主を隠すためのPOVショットである。そのPOVショットのなかで、駆けつけすれ違う警官とフリアは、その主に気づかない。まさに透明人間なのだ。

 盲目になって以後は、POVショットは使えない。4年以上前の記事で盲目の主人公の描写として最高だとした「見えない恐怖」(R・フライシャー)と同様に、POVショットが使えないかわりに、キャメラが主人公にぴったりと寄り添う。それだけに観客も多くを見渡すことができない。つまり主人公が触れることのできる範囲だけがフレーミングされる。
 「見えるってどういうこと?」と問う盲目の子供の疑問に、母親は「うんと遠くまでいっぺんに触れるようなものよ」と答えたという話がある。逆に見えないということは、触れる範囲だけ見えるようなものとも言えよう。
 したがってフリアの出会う人の顔が、フレームから/暗く陰って視覚から、排除されるのはフリアが触れることができないか/触れても認識できないからだ。POVショットを用いて登場人物の視点を借りずとも、サブジェクティブトリートメントは可能だという好個の例。

 しかし最もこの映画がサスペンスフルなのは、フリアが包帯をとってからだ。フリアは、見えないフリをする。一方的に見る人であって、見られることのなかった犯人は、今やもっとも状況が見えていないのだ。
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  1. 2011/07/06(水) 19:55:50|
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Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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