撮影監督の映画批評

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「武士の家計簿」(森田芳光)

(ネタバレあり)

 映画は猪山成之(伊藤祐輝)が、そろばんバカと呼ばれる父、直之(堺雅人)を回想する形ではじまる。そしてラスト近く回想は閉じられ、成行は、父を背負い母を伴い、幼い頃父に辛い仕打ちを受けた川沿いを歩く。そこで成行は、自分には父におんぶしてもらった記憶がないと言う。そんなことはないだろうと父は言い、妻の同意をえるが、ただそれだけで、強いて息子に思い出せるようなことをしない。
 そこに父に背負われ「鯛じゃ鯛じゃ」とはしゃぐ幼い成行がフラッシュバックされる。このカットは確かに彼の回想のなかにあった。我々観客も見ているはずのカットだったが、少なくとも私は忘れていた。なぜなら、このシーンは、あくまで家計の窮地を絵鯛でしのいだエピソードとして語られたにすぎないからだ。決して父親におんぶされた記憶として描かれていたわけではない(コンテキストが違う)
 成行の回想で語られてきた父直之は、そろばんバカと呼ばれるにふさわしい、実直ではあるが、人情味にかける人物であった。息子はそんな父に厳しく躾けられてきたというストーリーを語る。いかに辛い想いをしてきたか。人は物語るとき、その物語に資することのないもの、都合のわるいものを、体よく排除する。
 成行は、いわゆる「信頼できない語り手」である。しかしそんなことはどうでもいい。そんなことはどうでもいいと、ただ背負われる父と、おんぶしてもらった記憶はないが、父をただ背負う息子が確かにそこにいて、確かに息子をおんぶする父のフラッシュバックが重ねられるのだから。
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  1. 2011/01/10(月) 23:23:27|
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著書

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中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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