撮影監督の映画批評

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「ロボコップ」(ポール・バーホーベン)

 暦と関係がない職に就きながら、とうの仕事がなく(困ったものである)無聊をかこっていると、人出の多い休日は蟄居してやり過ごすのが常になる。そんなとき好きな映画をDVDにて再見する。

 ヒットした映画がなぜヒットしたのかがわかれば、このように暇を持て余してはいないだろうが、それでもまぁ自分なりにその答えを求めてみる。もちろん自分も面白く観たものに限るし、それが作劇に関するものでなければ、私が知っても意味はない。そこで常々考えるのが、いかに感情移入させるかである。感情移入できる映画がすべてヒットするとは限らないし、安易な感情移入を拒むような映画がヒットすることもあるだろう。しかし、少なくとも感情移入それ自体が謗られるいわれはあるまい。感情移入の達成度は、そのままとまでは言わないまでも、なかなか率のいいバロメーターになりうるのではないか。

 そこで「ロボコップ」である。実に見事なのだ。順を追ってみていこう。
 一見すると、クラレンス一味によるマーフィー(ピーター・ウェラー)の処刑(ポール・バーホーベン曰く「キリストの磔刑」)の執拗かつ残酷な描写が憤りを煽り感情移入に拍車をかけているように思われる。もちろん正解である。であるが、かといってその成否が残酷描写の多寡に還元されるほどナイーブではない。
 この冒頭まもなくの処刑シーンでは、我々観客はまだマーフィーの視点にたっていない。しかし我々観客はここではじめてある登場人物の視点を借りてそのシーンを見る。観客席の視点から作品世界内の視点へとくりあがるのである。その視点とは相棒アン・ルイス(ナンシー・アレン)のそれである。そのとき彼女は金網に遮られ近づくこともできず、ただ金網越しに見ることしかできない無力な存在としてある。見ることしかできない存在、つまり観客の似姿としてあり、観客と、視点と感情を共有する。
 ルイスを呼び水として、作品世界内へとくりあげられた視点は、病院に運び込まれる段になってやっとマーフィーのそれへと引き継がれる。なぜなら、瀕死のマーフィーは動くことのできない、ただ施される処置と、過去の記憶を見ることしかできない観客の似姿としてあるからだ。であるから、これらがPOVショットで撮られていることが重要なのである。さらにロボコップとして復活する際もその視点は保持される。マーフィーは記憶を消され、プログラムによって動くことを強いられるロボコップになる。つまり能動性が奪われる。これぞまさに観客の映画体験そのものでもある。観客もまた登場人物に感情移入することでしか作品内を動き回ることはできない。偽の能動性という意味で全く同じなのである。
 ストーリーは、マーフィーのアイデンティティ回復を描く。それはすなわち観客の感情移入という偽の能動性から「真の能動性」への不可能な試みにトランスレートされる。DVDのコメンタリーでポール・バーホーベンが映画のラストを次のように言っている。
 「一般の人と見た時、渡米以来最高の経験ができた。様々な人種がいた。社長が“名前は?”と聞いた後のことだ。ロボコップことマーフィーが答える前に何百という観客が“マーフィー”と言ったんだ。鳥肌がたった」
 つまり観客自身が「マーフィー!」と口にすることで能動性の回復を試みたのだ。しかし不可能なのだ。だからそこで映画は終わる。
 
 
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2010/05/01(土) 05:08:02|
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著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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