撮影監督の映画批評

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「目白三平物語 うちの女房」(鈴木英夫)

 国鉄に勤務して二十数年の平凡なサラリーマン・目白三平(佐野周二)がひとり、たまの温泉旅行に出かけるところから映画は始まる。
 留守番の妻(望月優子)が隣の奥さんと買い物に出かけると、どこからともなく「シュッ」と鋭い音がする、会話をとめてその音の方を見やるとカットが変わり、キャメラは路地の奥からカンナ掛け(の音だったのだ。)する大工越しに、それを一瞥して通り過ぎる二人をとらえる。つづくカットで会話が再開され、増築する裕福な近所の家を羨望する。
 一方、留守番に残された子供も友達に誘われ出かける。その道すがら、かりんとうを落としてしまう。惜しいけれども泥がついていては仕方がない、友達に促されその場を離れる。路地を折れようとするその際に、未練が残って振り返ると、泥のついたかりんとうを拾いみすぼらしい少年が逃げていくのをが見える。
 この金持ちも貧乏人もその後たびたび登場するのだが、冒頭この二つの道すがらのシーンだけで、中流階級としての目白家が見事に描写されている。相対的な位置づけ。
 つづく八百屋でのシーンでは、八百屋のおやじが嫁入り前だというのに遊んでばかりの娘、雪子(団令子)を嘆き、それを聞いた店員は嫁入り前だから遊ぶのだと言う。
 斯様に作品中、視点のとりようによって意味合いをかえるエピソードが頻出する。絶えず相対的な位置づけを繰り返し、それに一喜一憂する様子が描かれるのである。
 三平のなくしたパイプと同じパイプを妻がおみやげに買ってきてくれるやいなや、(まるで「盗まれた手紙」のように)状差しの中にパイプを見つけてしまう。しかし三平は見つけなかったことにして、妻のおみやげのパイプでおいしそうに一服するのだ。
 ラストちかくダンスパーティーで、三平は雪子と踊り、妻はその雪子のフィアンセと踊っている。妻が三平のところにやってきて雪子とかわると、俺と踊る方がいいだろうと三平は言う。妻はあの人たちに悪いからだと言い返すが、まんざらでもない様子。もちろん三平は何も言い返さない。
 三平は言わずにいる人である。その言わずにいることは観客と共有されている。雪子とフィアンセのそれぞれの過去を知るのも三平である。しかし彼はそれを言わない。
 <追記>
 同時上映で「くちづけ」(筧正典 / 鈴木英夫 / 成瀬巳喜男)を鑑賞。
 同じスタッフで監督だけ違うので、もちろん話も役者もちがうのだけれど、監督を比較しろというようなもの。知名度に惑わされずにどれだけフラットに見ても、やはり出来は知名度の順であった。知名度侮りがたし。
 第一話「くちづけ」(筧正典)の演出は平板にすぎる。基本会話シーンはただ横並びに歩かせ、たまにたちどまらせ、カットバックするだけである。
 第二話「霧の中の少女」(鈴木英夫)は、主人公の妹、妙子(中原ひとみ)が、姉の由子(司葉子)とその恋人、上村(小泉博)を見るその視線や表情に、一話にはなかった奥行きを与えている。こじつければ、この二話から妙子を間引けば一話になる。
 第三話「女同士」(成瀬巳喜男)全三話の中では描かれる空間は最も狭いにもかかわらず、その内実は最も豊かだと言っていい。それはもう冒頭、金田朋子(高峰秀子)が、急患を診察に出かける夫(上原謙)を送るそのシークエンスだけで十分だ。すでに自分がみがいた靴をさらにみがく看護婦、 キヨ子(中村メイコ)への視線であったり、上がりかまちへの一歩と退きという演出。極端に言えば、一話はセリフに演出が従属している、しかし成瀬の三話は、あくまでセリフは演出に従属するものにすぎない。
 三話のラストは「イブの総て」(ジョセフ・L・マンキーウィッツ)。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2010/04/25(日) 00:12:51|
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著書

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Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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