撮影監督の映画批評

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「エスター」(ジャウム・コレット=セラ)

 エスター(イザベル・ファーマン)が、養父ジョン(ピーター・サースガード)と、妹になったマックス(アリアナ・エンジニア)とで、公園にいる。視点はまずブランコをこぐエスターのものである。ジョンに声をかける女とそのやりとりを、エスター視点で見るのだし、エスターに嫌がらせをした同級生が公園にやってくるのもまた、エスター視点でとらえられる。巧いのは、くだんの同級生が何か異変に気づくというエスターのPOVに続けて、そこにいたはずのエスターを欠いた、空のブランコがただゆれるカットをインサートし、次にその空のブランコを見ている同級生のカットを繋いで、知らぬ間に、しかし鮮やかに、視点をシフトさせる技術である。空のブランコのカットは、同級生のPOVであったことが遡及してわかるような仕掛けで、前半のエスター視点と、後半の同級生視点を、緩衝する。
 このカットののちキャメラは、この同級生に寄り添っていく。同級生のPOVと、同級生に寄り添うキャメラとのカットバック。滑り台の降り口まで来た時に、この同級生を背後からトラックアップするカットがインサートされ、突進するエスターをとらえたカットが短く入る。一瞬のエスター視点へのシフト。客観的に落下をとらえて、客観的に状況をとらえた引き画になる、何かに気づく滑り台の上のエスター。続いてそのエスターを見ているマックスのカットになる。つまり客観的な視点の引き画だと思われていたカットは、マックスのPOVであったと遡及してわかる。このシーンはマックス視点で閉じられるのだ。見事に視点がリレーされていく。

 ケイト(ベラ・ファーミガ)が、エスターの過去をインターネットを使って調べ、徐徐にその真相が暴かれようとするのにパラレルモンタージュされるのは、暴かれては困るエスターではなく、エスターの正体を暴こうと証拠の隠されたツリーハウスに向かう長男ダニエルの姿である。ここでは秘密を暴こうとしている二人がパラレルモンタージュされる。暴かれる当の本人エスターは、しばらくの間一切姿を見せないにも拘らず、いやそれゆえ、すぐそこまで来ているのでは?という緊張感を画面に与える。さらに人は同時に異なる場所に存在することはできないのだから、エスターがどちらに現れるのかというサスペンスにもなっている。

 どの視点から語るかという取捨選択が的確で、面白い。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2009/10/15(木) 20:48:37|
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著書

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中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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