撮影監督の映画批評

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「スラムドッグ$ミリオネア」(ダニー・ボイル)

 ネタバレ注意

 映画は、まず3つの時間が並行して語られる。
 1)「クイズ$ミリオネア」に出演し解答していくジャマール(デヴ・パテル)
 2)警察になぜ答えを知りえたかを尋問されるジャマール
 3)なぜ答えを知りえたかの答えとしての回想
 
 1)の「クイズ$ミリオネア」のQにあたるのが2)の尋問であり、Aにあたるのが3)の回想である。であるから「クイズ$ミリオネア」の司会者は、尋問する警部と重なる。また1)の「クイズ$ミリオネア」で正解しつづけることは、つまり勝ち抜き式のクイズを生き延びることであり、3)の回想で描かれるスラム街で生き延びることと重なる。
 つまり「クイズ$ミリオネア」を生き延びることができたのは、スラムドックとして生き延びてきたからだという語り。

 その3本の線がニュアンスを変える。回想が、生き延びることに加えてラティカを探し出すことを描きだし、尋問する警部は次第にジャマールの物語に魅了されていく。もはや警部は、司会者ではなく我々観客あるいは「クイズ$ミリオネア」で固唾をのむ観客に近い。
 
 そしてジャマールは去り行く警部になぜ「クイズ$ミリオネア」に出たのかを語り、物語は見事に反転する。
 「クイズ$ミリオネア」でなぜ答えることができたかの答えが、ジャマールの回想で語られてきた(1→3)。
 それがいまやジャマールの回想で語られてきたラティカを探し出すことの答えこそが、「クイズ$ミリオネア」にあった(3→1)という顛倒が描かれるのだ。

 「三銃士」の3人目の銃士の名前は?という最期の問い。ライフラインのテレフォンでラティカが出て自分の名前を言う。それこそがジャマールにとっての正解。ラティカが名乗ったその時点でジャマールにとっての「クイズ$ミリオネア」は終わっている。その後、偶然にも正解し賞金を得るのは、ジャマールにとっての正解にいたったことを「クイズ$ミリオネア」の観客/視聴者らにもまた祝福させるためである。
 
 <追記>
 途中、ジャマールが兄もろともビルから墜落するカットが、そう想像したかのように挿入されていたが、あのおさまりのわるさと、ラスト巻き戻すように再会後のラティカとジャマールが逆回転するのを見ると、あの墜落のカットが現実でそれ以後のことは、「ふくろうの河」のごとく着地するまでに見た夢なのではとつい考えてしまうが、よくない。

 いずれにしても個人的なダニー・ボイルの最高傑作は、いまだに「ザ・ビーチ」。
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テーマ:スラムドッグ$ミリオネア - ジャンル:映画

  1. 2009/04/21(火) 07:06:18|
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著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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