「ハピネス」(ホ・ジノ)
 ヨンス(ファン・ジョンミン)に、療養所で同室のソック(パク・イナン)が煙草を吸いながら次のように問う。肺ガンとわかって煙草を吸ったことを後悔したが、今は後悔しないように吸う、この違いがわかるか?
 ヨンスは答えないが、もちろんその違いはわかる。しかし、いつどのようにしてそのように変わったのかはわからない。いつしかそのように変わったとしか言いようがない違い。

 「ハピネス」は「春の日は過ぎゆく」の男女を取り替えたような話。
 女に去られる男を描いた「春の日は過ぎゆく」
 女のもとを去る男を描いた「ハピネス」
 どちらも、恋とその別れを丁寧に描いている。ホ・ジノが巧いのは、恋愛とその終わりの過程をいつしかそのように変わったとしかいいようがない語り口で描くからだ。
 恋愛中の二人と別れを迎えた二人は、明らかに違う。しかし、いつどこで二人の気持ちが離れたのかを指摘することはできない。凡百の恋愛映画であれば、指摘しうる出来事が存在し、それを境と画然とする演出がなされるだろう。
 変化は不連続ではない。ホ・ジノは連続する変化を描こうとしている。その変化はいつしかそのように変わったとしかいいようのない仕方で描写されるべきなのだ。
 「ハピネス」は、その点ややつらい。なぜなら「サンライズ」(F・W・ムルナウ)のような都会の女の誘惑という出来事に集約されがちだから。
 
 ウニ(イム・スジョン)はヨンスに、自分が死ぬ時は必ず側にいてくれと頼む。ヨンスは答える代わりに、自分が死ぬ時も側にいてくれるかと聞く。
 (事故や故意でない限り)人は同時に死ぬことはできない。
 恋愛の終わりも同じく、二人に同時に訪れるわけではない。
2008/12/24(Wed) | 映画感想 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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