撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「秘密と嘘」(マイク・リー)

 96年カンヌ国際映画祭にてパルムドール受賞の「秘密と嘘」を再見。

 脚本は一切使用せず、現場で役者とともに即興的に作り上げられていった映画だそうだが、そのストーリーテリングは計算され尽くしている。即興にスポイルされる柔な構造ではない。展開へのテンションをはちきれんばかりに孕んだ設定。その展開を抑圧しているのが、秘密と嘘である。頃合いを見計らってそれらを暴露するだけで、その方向性が即興によってぶれることはない。

 主人公のシンシア(ブレンダ・ブレッシン)と、その弟の妻モニカ(フィリス・ローガン)の関係は類比的である。
 シンシアは、不在の伴侶への愛を、娘ロクサンヌ(クレア・ラッシュブルック)に向けることで代替するが、娘は当然伴侶とはなりえず、その齟齬に八つ当りする。
 モニカは、産むことのできない子を新居に代替させるが、足ることを知る由もなく、夫モーリス(ティモシー・スポール)にその矛先は向かう。
 2人とも、愛する人に苛立つべきではないと知りつつも、そこに抑圧したものを重ねるがゆえに裏切ってしまう。そうなってしまうことにもまた苛立つという悪循環。

 映画は、ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)にシンシアの娘であることを暴露させる。最初は戸惑うが、直情径行のシンシアはすぐにホーテンスを受け入れる。ホーテンスに、ロクサンヌが代替することができなかった伴侶の姿を見るかのごとく。だからロクサンヌが、母親が男と逢っていると勘違いするのも故なきことではないのだ。

 パーティーにて皆に暴露される、ホーテンスの出生の秘密と、モニカが子供の産めない体であること。
 「秘密と嘘」は、秘密と嘘がなくなってめでたしという話のようで、そうではない。
 全ての秘密と嘘が暴かれたかと思われたその後に、新たな秘密と嘘が語られる。
 シンシアは、ロクサンヌにあなたのお父さんはいい人だったと嘘をつき、ホーテンスが私の父はどうだったのかと問えば、それは語れないと秘密にするのだ。

 ラスト、白い木枠の小屋の中を、2人とも黒い服を着てホーテンスとロクサンヌの異父姉妹が見つめている。白い木枠に縁取られ、黒い服を纏うその肌は、黒人と白人のそれでありながら、黒い服程黒くなく、白い木枠程白くない。2人は姉妹である。
 モーリスとモニカの夫妻を観ていると、「ぐるりのこと。」を思い出した。
 主にそれは、モーリスのカメラマンとしての仕事ぶりと、カナオ(リリー・フランキー)の法廷画家としての仕事ぶりの描写に重なるものを感じたからである。
 どちらも、それをとても丁寧に描いている。全く夫婦とは関係のない人たちを、フレームに切りとっていくという作業。モーリスとカナオの人柄も似ているかもしれない。

 
スポンサーサイト

テーマ:ヨーロッパ映画 - ジャンル:映画

  1. 2008/09/23(火) 19:51:27|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「サン・ジャックへの道 」(コリーヌ・セロー) | ホーム | 「パコと魔法の絵本」(中島哲也)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pointbreak.blog66.fc2.com/tb.php/193-58f9b687
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。