撮影監督の映画批評

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「パコと魔法の絵本」(中島哲也)

(ネタバレあり)

 大貫(役所広司)の「お前が私を知ってるってだけで腹が立つ。気安く私の名を呼ぶな。お前の頭の中になんかいたくないんだ」という口癖が巧い。

 これは明らかにパコ(アヤカ・ウィルソン)が一日しか記憶を保てないという設定から、逆算して考えられたものに違いない。にもかかわらずパコのこの設定よりも、大貫のにべもない態度のほうが印象に残る。
 それはもちろん大貫が主役だから当然なのであるが、その主役の主たる設定が本人に由来しないのがユニークなのだ。
 創作上では、忘れたくなくても忘れてしまうパコがあって、私を忘れろと毒づく大貫がたてられる。逆ではない。

 その大貫が1人で築き上げたと信じて疑わない会社の業績が、大貫不在でもアップしたのだと告げられる。自分がいなければ会社は駄目になる、他の誰でもなく自分でなければならない、そう信じてきたがそうではなかった。
 理由はあきらかだ。数字がそれを証しだてている。

 そんな失意の大貫がパコの頬を触れると、記憶がないはずのパコが昨日も大貫が触ったとおぼえている。
 なぜパコは大貫が頬を触るのだけをおぼえているのか、の理由は示されない。しかし我々観客はそれに戸惑うことはない。
 なぜなら理由ないからこそ、大貫は他ではない自分が選ばれたのだと信じることができるからだ。
 理由がないことこそ、自分が呼びかけられた証しなのだ。
 だから、逆に理由があってはいけない。

 ラストのヒネリも巧い。発作を繰り返し、霊安室の換気扇はまわり、医者にもうとっくに予想される死期は過ぎていると語らせ、劇中劇で死に行くガマ王子を演じる大貫。

 「そうか、もうこれからどうなるかわかったぞ!」

 観客は最後に大貫が死ぬにちがいないと思い込む。見事な燻製ニシン
 しかしこれが見事なのは、もちろん憶測の域をでないのだが、そのように最初構想されたからなのではないだろうか。そののちパコを死なせることに。その方が尚うまくいく、と後藤ひろひと氏が膝を打ったかどうか。

 そして、「この娘の心の中にいたい」というセリフ。
 「お前の頭の中になんかいたくない」という冒頭の口癖は、このセリフからも逆算されている。


 もとの舞台「MIDSUMMER CAROL?ガマ王子VSザリガニ魔人?」は以前に観ていて、さして改変があるようには感じなかった。脚本がいい上に、呎も舞台からの脚色であるから、さしてカットする必要もなさそうだ。問題は、限定された空間。もちろん無理に拡げることもなかろうが、その点後半の3DCGアニメはひとつの回答だったように思う。
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テーマ:パコと魔法の絵本 - ジャンル:映画

  1. 2008/09/21(日) 21:18:08|
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著書

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中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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