撮影監督の映画批評

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「闇の子供たち」

闇の子供たち

 (ネタバレあり、結末に触れています)
 このデリケートな題材を撮影するにあたり、阪本監督は細心の配慮で臨んでいる。語っている内容を語り方で裏切るようなことがあってはならない。「こうした犯罪に興味を抱く輩を新たに発生させ」てはいけないからだ。この点で私が述べることは何もない。

阪本「今回自分で脚本を書くときに、最初に決めたのが南部の結末なんですよ。ラスト・シーンだけど、あそこを起点に、そこから遡って全シーンを作ってるんです。それはなぜかというと、観終わったときにこれが(自分とは関係ない)遠いところの話じゃなくて、すべての人じゃないかもしれないけど、観た人に返ってこなきゃいけないという想いがあったからです」
 劇中には「俺たちは観たものを伝えるのが仕事だ」と言い放つ南部と同じ新聞記者(豊原功補)が登場するが、阪本監督の姿勢はそれとは明らかに違う。
阪本「あれはジャーナリズムだと思うんですよ。僕らがやっているのは劇映画だから、最終的にドキュメンタリーとは違う“作為”を作り込んで、告発というものに留まらない表現をしなきゃいけない。告発とは自分が関知しない事件を世に問う行為だけど、そこに自分たちが関知する“作為”を込めることが、結局、劇映画でやる意味なのかなと思ってるんですよね」


 なのでラストシーンの“作為”の語り口に限定し、このいわゆる「衝撃の結末」というのが、どのように用意されるのかについて。
 南部(江口洋介)の正体が意外であればあるほど、それが明らかになった時の衝撃度はいや増す。しかしそれは意外であっても納得できるものでなければならない。であるから、それと気づかれない形で伏線が張られる。伏線が伏線に見えてはいけない。しかし、忘れられてしまうような描写では意外なラストを説得できない。
 映画「ソードフィッシュ」(ドミニク・セナ)の中で、トラボルタがフーディー二のマジックを語り、Misdirection(「相手の視線・注意力・推理力などを、誤った方にそらせ、実際に起きてい ないことを、起きたと思い込ませるテクニック」)に言及する。
 あるいはヒッチコックが、「サイコ」のジャネット・リーが惨殺される不意打ちのトリックを、red herring 「燻製にしん」として紹介している。
 

観客というものは、映画を観ながら、いつも映画そのものより一歩先んじて、「そうか、もうこれからどうなるかわかったぞ!」と思いたがるものだ。(「定本 映画術」)



 「闇の子供たち」では、なにが「南部の結末」に対してMisdirection/red herringとして機能しているか?なにが、「南部の結末」を用意する伏線を伏線然として見られることを回避させているか?

 NGOの仲間、ゲーオの正体がMisdirection/red herringになっている。Misdirection/red herringとして機能させるために、ゲーオの正体に対する伏線はあえて伏線然として演出されている。例えば、その登場シーンである到着する車からの見た目で示されるゲーオが、なぜかスローモーションである。そのようなわかりやすさは、Misdirection/red herringであって、観客に「そうか、もうこれからどうなるかわかったぞ!ゲーオが怪しいんだ」と思い込ませる。そう思い込んだ観客に「南部の結末」に対する伏線は、伏線に見えない。

 では、ゲーオはそのためだけに存在する登場人物なのか?
 それは、ある意味正しく、ある意味間違っている。
 もし、ゲーオというMisdirection/red herringなしで、「南部の結末」が提示されたらどうだろうか?
 丁寧に細心の注意を払って描いてきた告発の中に、いきなり“作為”が顔を出し全てをぶち壊しかねない。
 ゲーオという登場人物は、ラストの不意打ちをMisdirection/red herringさせるものであり、告発というスタイルの中に“作為”を導入する緩衝剤でもあるのだ。
 もちろん、これは語り口に限っての話である。
 
 
 


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テーマ:ミニシアター系 - ジャンル:映画

  1. 2008/09/05(金) 18:42:41|
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著書

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中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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