撮影監督の映画批評

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ダージリン急行

ダージリン急行

 個人的な嗜好にすぎないが、パンが好きである。
 といっても、breadではなくて、カメラを左右にオペレートするpanのことだ。
 一口にパンと言っても、移動する被写体をフォローするパンであったり、原意のとおりパノラミックに見せるパンであったり、ただフレームAからフレームBをつなぐためのパンであったり、まぁ様々である。
 なぜパンが好きなのかを誤解を恐れずに言うならば、音符をつなぐタイやスラー(レガート)のようなものに思え、それらがシンコペーションのような変化をもたらすように思えるからだ。(フォローパンがタイで、AからBへのパンがスラーかしら)

 以前のウェス・アンダーソンと比べて、あくまでそのフォルムに限れば、「ダージリン急行」が最も変化に富んでいる。
 平面的なフォルムのままかつ立体的。
 シネマスコープサイズ、シンメトリーの多用、トレードマークともなっている横移動、大胆なカット割りなどから、ウェス・アンダーソンの平面性は以前から強調されてきた。
 さてそこに過去作にも散見されはしたが、「ダージリン急行」において飛躍的な伸びをみせたのが、パンなのだ。
 このパンの圧倒的物量(トータルの回転角度はおそらく近年随一ではないだろうか)に驚かねばならない。そしてさらに驚くべきは、そのパンが平面性を損なわないところだ。
 パンとは、即ちアングルを変えることであるから、視点となるカメラ位置が、その場所でそれぞれの被写体に対しどのような位相にあるかを立体的に再構成することができる。つまり奥行きの感覚をカメラと被写体の間に生じさせるはずなのだ。

 ではなぜ「ダージリン急行」において平面的なパンというものが可能なのか?

 ウェス・アンダーソンのパンは、ただフレームAからフレームBをつなぐだけのパンであって、その間の画に奥行きを構成する力を与えないからである。つまりカットでつなげていいはずのAとBをパンでつなげているだけなのだ。だからAとBをカットでつないでも、AとBをスウィッシュパンしても、物語上は全く影響ない。

 映画をシンコペーションさせる為のパン。
 空港の搭乗待ちの長まわしにおける公衆電話への三人それぞれへのパンが、映画を躍動させてはいないだろうか。
 カットでつなぐかパンでつなぐか(どこでシンコペさせるか)、その選択が的確なのだ。
 

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テーマ:ミニシアター系 - ジャンル:映画

  1. 2008/05/12(月) 22:08:00|
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著書

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中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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