「タロットカード殺人事件」
タロットカード殺人事件

 ピーター(ヒュー・ジャックマン)のパーティーで、サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)とシドニー(ウディ・アレン)が、ピーターの目を盗んでワインセラーの隣にある地下室に忍び込むくだりは、ヒッチコックの「汚名」を髣髴させる。
 サンドラの戻りが遅いので地下へと向かうピーター、地下室に閉じ込められ解錠するための暗証番号を思い出せないシドニー。万事休すと思わせてピーターの目前で既に脱出し終えたシドニーとサンドラを見せる、この極端な時間の縮減はジョン・バダム得意の演出を髣髴させる。
 九死に一生を得たサンドラは、ピーターと一夜を共にし、ピーターが眠っているのを見計らい再度地下室へと向かう。そこで発見するタロットカード。それを見るサンドラのクロースアップに続いて、寝室でサンドラの不在に気づくピーターのクロースアップ。再度、(今度こそ)見つかるかもしれないというサスペンス。結論から言えば、今回も回避される。しかしその回避のされかたが予想を裏切る。
 サンドラの不在におかしいと気づいたピーターが、地下室へと向かうだろうことは前回のくだりを見ている観客の自然な発想。さらに前回の学習から今回もそこで既に脱出し終えているのではないかという発想も想定内。しかし今回はサンドラが既に寝室に戻っているという迎え撃ちには、想定外の不意打ちを受けるのだ。

 ウディ・アレンのカメラワークは、さりげなさこそ最もテクニカルなことだという証で、ズーミングがこれほど自然になされているカメラを知らない。(撮影者の目から見るとさりげないズームほど、さりげなく見逃せないものはない)
 長まわしのイメージはウディ・アレンにはないが、それは本当の長まわしができる演出家の証であって、それは縦の演出とパンの演出ができるということに他ならなく、本作でそれは遺憾なく発揮されている。
 
2007/11/09(Fri) | 映画感想 | トラックバック(1) | コメント(0) | page top↑
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