撮影監督の映画批評

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コントラストについて

 このブログでくどいくらい何度も引用しかつ拡大解釈している山中貞雄の言葉がある。

「一つのシャシン(映画)にアップが一つあればそれだけ効果があるのや、二つあれば、それが半分になる訳やろ」

 かくいう山中貞雄がアップの一つしかない映画を撮っているのか?現存する作品が3本しかない以上知る由もないが、まずないだろう。もちろんこれは際立ちの効果を語るためのたとえ話にすぎない。たまたま通時的レベルでの効果が説明しやすかっただけだ。
 この格言の射程は思いのほか広い。そこで今回は共時的レベルでのコントラストを。とはいっても被写体とフレーミングのコンビネーションによるコントラストを網羅することなど不可能なので、さらに限定してテクニカルな撮影手法による効果だけに言及する。
 
1)フォーカスによるコントラスト
2)補色関係(カラーコレクション)によるコントラスト Hue
3)彩度によるコントラスト Saturation
4)明暗(ライティング)によるコントラスト Brightness

1)に関しては昨今のDSLRmovieの隆盛が物語ってるので、あえて説明はしない。ただ後に述べる2)の補色関係によるコントラスト同様、際立ちの手法が画一化し、際立たなくなるというパラドックスを抱えている。
3)に関しては「天国と地獄」(黒澤明)、「ランブルフィッシュ」(フランシス・フォード・コッポラ)、「シン・シティ」(フランク・ミラー、ロバート・ロドリゲス)などのパートカラー作品を例にあげれば十分かと思う。「天国と地獄」や「ランブルフィッシュ」などは、「一つのシャシン(映画)にカラーが一つあればそれだけ効果があるのや、二つあれば、それが半分になる訳やろ」とも言え通時的レベルを含む。


 今回詳述するのは、2)と4)であるが、まず4)のライティングのコントラストから。

4)明暗(ライティング)によるコントラスト Brightness
 基本は以下にあげる4つのコントラストパターン(A?D)の組み合わせで事足りる。

original.jpgbacklight.jpg

 左(A)は被写体(まる)をライティングすることで際立たせている。右(B)は被写体をシルエットにして際立たせている。

vlcsnap-2010-10-17-01h26m42s110_convert_20101019143333.png
 「ボビー・フィッシャーを探して」(スティーブン・ザイリアン)からの1シーン。左の少年は暗いバックにライティングされて際立ち(A)、右のベン・キングズレーはシルエットで際立つ(B)。


luster.jpg
 左(C)は被写体の輪郭にライティングすることで際立たせている。実際、ライティングの現場では、「逆」だとか「タッチ」だとか「ツヤ」だとか言われ、キャメラに対して逆光になる位置からライティングされる。
vlcsnap-2010-10-19-15h10m44s45_convert_20101019153724.png
 「ダーティハリー4」(クリント・イーストウッド)からの1シーン。ハリーの頭部から肩口にかけて、輪郭のライティングで際立っている(C)。ちなみに下半身は、シルエットで際立つ(B)。


spot.jpg
 理屈からいけば、輪郭を暗くすることで際立つパターンも考えられる。スポット的なライティング(D)。キャッチライトも、白目バックの黒目(瞳)に光を入れるのであるからここに分類されよう。しかし、このDはB+Aと考えれば、なくてもよい。
vlcsnap-2010-10-18-21h18m54s197_convert_20101019155744.png
 「アメリカン・ビューティー」(サム・メンデス)からの1シーン。「ボビー・フィッシャーを探して」と同じくコンラッド・L・ホールの手によるもの。ただただすばらしい。


 以上4つパターンが基本である。次に少しその応用/組み合わせを。
 
eastwood.jpg
サイドにまわったAのライティング。

      Avlcsnap-2010-10-18-22h30m12s231_convert_20101019161235.png
 「ミリオンダラーベイビー」(クリント・イーストウッド)からの1シーン。イーストウッドはこのように輪郭がとけこんでいても気にしないことが多い。


+luster.jpg
 溶込んだ輪郭をCのライティングで際立たせる。

     A+Cvlcsnap-2010-10-18-21h45m45s136_convert_20101019162154.png
 「アメリカン・ビューティー」からの1シーン。


combi.jpg
 溶込んだ輪郭をBのシルエットで浮かび上がらせる。

    A+Bvlcsnap-2010-10-17-01h28m51s224_convert_20101019162836.png
 「ボビー・フィッシャーを探して」からの1シーン。ライティングとはフレーミングでもあるということの好個の例。


 では次に2)補色関係によるコントラストを見ていこう。(なお以下の話は基本的に次のサイトからの受け売りである。ProLost:Save Our SkinsInto The Abyss:Teal and OrangeDigital Cinema Foundry:Why the so called “Blockbuster” look? (color grading explained)
 2000年の「オー・ブラザー」(コーエン兄弟)を嚆矢として、いまやDIによって可能となったカラーコレクションはハリウッド映画にかかせないものになっている。(そんなデジタル全盛のなかにあっても2007年の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(ポール・トーマス・アンダーソン)のようにケミカルに拘る人々も少なからずいるのだが)
 タイミングと呼ばれるフィルムの色調整では、カット内全体の明るさと全体の色味しか補正することができなかったが、デジタルによるカラーコレクションは、カット内の様々な部分を選択限定して補正することが可能である。
 ようはデジタルでなんでもできてしまうのだ。にもかかわらず、ハリウッドのブロックバスター映画に顕著なのであるが、ルックの画一化が進行しているのだ。
 それが TEAL&ORANGEである。TEALとは鴨の羽色でありつまり青緑色である。ORANGEはオレンジ色であり赤と黄の間色である。つまり人物の肌色あたりを指している。
Kuler_orange_teal.jpg
 これはオンラインサービス「Adobe Kuler」(クーラー)で配色ルールにComplementary(補色)を選択してカラーホイールのポインタが肌色をさすようにしたものである。つまり人間の肌色、ORANGEの補色(色相環で正反対に位置する関係の色の組み合わせ)にあたるのが、TEALというわけなのだ。
color.jpg
 被写体/人の肌色は保持したまま、そのバックを補色であるTEALにカラーコレクションすることで際立たせる。





 以下実例をあげるが、大河ドラマの「龍馬伝」なども方向性はTEAL&ORANGEである。
DH2_convert_20101019175434.jpg
blockbuster_convert_20101019175559.jpg
ironman2_convert_20101019175700.jpg


 

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  1. 2010/10/19(火) 20:02:21|
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著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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