撮影監督の映画批評

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「その場所に女ありて」(鈴木英夫)

 鈴木英夫の代表作とされるだけあって、面白いし、傑作。(しかし同時上映だった「社員無頼 反撃篇」は、その前編を観ずの鑑賞だからなのか、全くうけつけなかった)

 矢田律子(司葉子)は、姉(森光子)からちょっと出てきてほしいと電話を受ける。カットがかわると街角でタバコを吸う男(児玉清)に。つづけて律子のクロースアップにカットされ、そこはすでに姉と対面する喫茶店の中だとわかる。そしてその会話から先ほどの男が姉の亭主であり、金の無心を外で待っていたのだということが事後的にわかる。見事な場面転換。
 応接室で泣き崩れるミツ子(水野久美)、慰める祐子(大塚直子)、それを応接室のドアを背に距離をもって見つめる久江(原知佐子)、キャメラは応接室の外にでてドアの側で聞いていた律子へとリレーされる。この4人の女性のポジションだけで、それぞれの性格が一気にわかってしまう。これぞ演出というもの。
 酔って介抱された律子が坂田(宝田明)に痛烈な一言を浴びせられるとカットがかわり、よろめきながら夜の歩道を歩く律子の後ろ姿をキャメラはトラックアップしながらフォローする。このカットは以前に見たことがある。「乱れ雲」(成瀬巳喜男)で、女将の宴会で酔った由美子(司葉子)が廊下をよろめきながら歩くのを背後からキャメラはトラックアップしてとらえていた。同じ司葉子であり、同じキャメラマン(逢沢譲)。しかし「乱れ雲」の方が後に撮られている。どのような影響関係があるのかわからないが、いずれにしても後に「乱れ雲」で繰り返されることになるこのカットは、繰り返されるにたるカットだといえる。
 ラスト、坂田からの電話を受け、その誘いを断る律子へのポンヨリは最高だ。「えっ?」と訊きかえす言葉はただキャメラがよるきっかけにすぎないかのごとく間髪を容れずセリフが接がれる。この決然たるクロースアップと、つづく受話器を置く手のクロースアップから窓辺へと後ろ姿をパンアップするカットとのコントラストが秀逸。
  [「その場所に女ありて」(鈴木英夫)]の続きを読む
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  1. 2010/04/25(日) 19:51:30|
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「目白三平物語 うちの女房」(鈴木英夫)

 国鉄に勤務して二十数年の平凡なサラリーマン・目白三平(佐野周二)がひとり、たまの温泉旅行に出かけるところから映画は始まる。
 留守番の妻(望月優子)が隣の奥さんと買い物に出かけると、どこからともなく「シュッ」と鋭い音がする、会話をとめてその音の方を見やるとカットが変わり、キャメラは路地の奥からカンナ掛け(の音だったのだ。)する大工越しに、それを一瞥して通り過ぎる二人をとらえる。つづくカットで会話が再開され、増築する裕福な近所の家を羨望する。
 一方、留守番に残された子供も友達に誘われ出かける。その道すがら、かりんとうを落としてしまう。惜しいけれども泥がついていては仕方がない、友達に促されその場を離れる。路地を折れようとするその際に、未練が残って振り返ると、泥のついたかりんとうを拾いみすぼらしい少年が逃げていくのをが見える。
 この金持ちも貧乏人もその後たびたび登場するのだが、冒頭この二つの道すがらのシーンだけで、中流階級としての目白家が見事に描写されている。相対的な位置づけ。
 つづく八百屋でのシーンでは、八百屋のおやじが嫁入り前だというのに遊んでばかりの娘、雪子(団令子)を嘆き、それを聞いた店員は嫁入り前だから遊ぶのだと言う。
 斯様に作品中、視点のとりようによって意味合いをかえるエピソードが頻出する。絶えず相対的な位置づけを繰り返し、それに一喜一憂する様子が描かれるのである。
 三平のなくしたパイプと同じパイプを妻がおみやげに買ってきてくれるやいなや、(まるで「盗まれた手紙」のように)状差しの中にパイプを見つけてしまう。しかし三平は見つけなかったことにして、妻のおみやげのパイプでおいしそうに一服するのだ。
 ラストちかくダンスパーティーで、三平は雪子と踊り、妻はその雪子のフィアンセと踊っている。妻が三平のところにやってきて雪子とかわると、俺と踊る方がいいだろうと三平は言う。妻はあの人たちに悪いからだと言い返すが、まんざらでもない様子。もちろん三平は何も言い返さない。
 三平は言わずにいる人である。その言わずにいることは観客と共有されている。雪子とフィアンセのそれぞれの過去を知るのも三平である。しかし彼はそれを言わない。 [「目白三平物語 うちの女房」(鈴木英夫)]の続きを読む

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  1. 2010/04/25(日) 00:12:51|
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「The invention of lying」(リッキー・ジャーベイス)

 (ネタバレあり)
 嘘のない世界で、主人公マーク・ベリソン(リッキー・ジャーヴェイス)だけが嘘をつけるようになったという嘘の話=フィクション。
 マークは映画会社に勤める脚本家なのだが、その世界の映画は全てドキュメンタリーということになっていてマークら脚本家が書くのも創作=嘘の話ではない。このあたりは「ギャラクシー・クエスト」(ディーン・パリソット)で「嘘」の概念が無いサーミアンが、テレビ番組『ギャラクシー・クエスト』をドキュメンタリーだと信じ込むのに似ている。
 「The invention of lying」の「嘘」の概念が無い世界の人々は、嘘がつけないので本当のことしか言えない。しかし嘘がつけないだけで、本当のことを言わなければならないというわけではないはずであるのに、登場人物は黙るということを知らない。このあたり曖昧に処理されていて、首をかしげるのだが、その素っ恍けかた(嘘のつきかた)が徹底していて逆に感心する。
 一人嘘がつけるようになったマークは、人々にいい嘘を吹き込み幸せにしていく。このあたりは、「恋はデジャ・ブ」(ハロルド・ライミス)で一人同じ日を繰り返すビル・マーレイが、人々に善行を施すのに似ている。
 
 さて結末である。アンナ(ジェニファー・ガーナー)に対するマークは、すんでのところで嘘をつかない。2度目でアンナがそのことに気づきハッピーエンド。
 嘘をつかないという選択は、嘘がつけないとできない。
 唯一嘘をつくことができる人物は、唯一嘘をつかない人物である。
 嘘はつくために必要なのではなく、つかないために必要なのだ。
  

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  1. 2010/04/08(木) 20:30:27|
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「マイレージ、マイライフ」(ジェイソン・ライトマン)

(ネタバレあり)
 リストラ請負人のライアン(ジョージ・クルーニー)のもとに、新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)が現れる。自ら解雇通告する為に現地に飛ぶライアンに対し、ナタリーはネットを利用することで実際に現地に飛ばずにすむのだと主張する。
 解雇通告であるからこそ逆に、その場にいて告げるという「人とのつながり」が必要だとするライアンが、その為に「バックパックに入らない荷物は背負わない」をモットーに「人とのつながり」を避けている。
 一方、解雇通告に「人とのつながり」は非効率的だとネットでの解雇を主張するナタリーは、恋人と一緒にいる(恋「人とのつながり」)ために決まっていた就職先を蹴ってまで入社している。
 この市松模様が面白い。さらにその模様が反転する。
 解雇通告するライアンが解雇通告されるという自己言及的なシーンが、ライアンの挑発によるシュミレーションではあるが前半にある。これがMisdirection(「相手の視線・注意力・推理力などを、誤った方にそらせ、実際に起きてい ないことを、起きたと思い込ませるテクニック」)として機能する。観客はこのライアンとナタリーの対立がメインの師弟もので、ライアンとアレックス(ベラ・ファーミガ)の恋愛はよくある添え物であろうと高を括る。
 そして、「バックパックに入らない」関係になろうとライアンがアレックスのもとに行くと、アレックスには家族がいたという結末。「バックパックに入らない荷物は背負わない」をモットーにしていたライアンが、「バックパックに入らない荷物は背負わない」関係でいようと言われるのだ。
 Misdirectionの自己言及(解雇通告するライアンが解雇通告される)はMisdirectionであるがゆえに実現しないのだが、結末の自己言及をひそかに予告していたことに、二重に驚かされる。

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  1. 2010/04/01(木) 15:11:09|
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著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

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