撮影監督の映画批評

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「ベッドとソファ」(アブラム・ローム)

 眠っている街という字幕に続けて、眠っている街のカットがモンタージュされ、目覚めた街という字幕に続けて、目覚めた街のカットがモンタージュされる。それぞれの的確なカットの積み上げに感心するのだが、なかでも目覚めた街として、水面に映る建物/街をいくつか重ねているのには、なるほど水面への反映が光の存在を喚起させるのだと膝を打つ。
 モスクワにやってきた男(ウラジーミル・フォーゲリ)が、行く当てもなくベンチに座り込み微睡むのだが、そこに尖塔の先に太陽を隠すカットがインサートされる。そのカットで隠しきれない太陽のフレアがゆっくりと動いているのがわかる。午睡へと誘惑する秀逸なカット。
 ウラジミールが身を寄せるのが、ニコライ・バターロフとリュドミーラ・セミョーノワの夫婦宅。その部屋は半地下になっていて、外の往来が窓から差し込む光線を動かす。
 夫のニコライが、ウラジミールに自分は出張するが遠慮はいらないと告げるのを、衝立越しに聞き耳をたてる妻リュドミーラ。そのプロフィールに落ちる往来の影の動きが、全てを語っている。
 ニコライの雨の日の訪問は、風を孕むカーテンで見えないドアの開閉を示し、テーブルの上の新聞が風でそり上がる。リュドミーラはやり過ごそうとするが、ニコライを追いかけ呼び戻す。その時開けられたドアからの風で、その前のカットではそり上がるだけで耐えていた新聞がテーブルから落ちてしまう。巧い。
 とにかく(原題は違うらしいが)「ベッドとソファ」というタイトルがいい。このタイトルに惹かれて観に行ったようなもの。
  [「ベッドとソファ」(アブラム・ローム)]の続きを読む
スポンサーサイト

テーマ:昔の映画 - ジャンル:映画

  1. 2009/06/26(金) 23:03:19|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

「世界」(ジャ・ジャンクー)

 オープニングクレジットがのる黒味に「バンドエイドない?」というセリフがズリ上がり、開演前の楽屋裏をバンドエイド求めて歩き回るタオをキャメラは延々フォローする。いたるところで「没有」と首を振られながら、それでも大声で怒鳴る。ようやく貰えたバンドエイドを貼ろうと腰掛けると、ジッパーが上がらないと仲間が邪魔をする。開演を告げるスタッフがダンサーらを急き立て連れて行き、楽屋に一人残されたタオは徐にバンドエイドを貼り、1カットを終える。

 理屈抜きに素晴らしいオープニングである。
 チャオ・タオが、「バンドエイドない?」と歩き回るだけで、それが映画=世界になっている。
 しかし理屈抜きで、理屈抜きの素晴らしさを巧くつたえることができないので、とりあえず理屈っぽく以下に記してみるが、理屈にすらなってないかもしれない。

 映画史に名だたる「黒い罠」(オーソン・ウェルズ)のオープニングの長まわしは、時限爆弾にセットされた時間に引き延ばされて、キス=爆破とともに1カット目を終えた。
 タオの繰り返される「バンドエイドない?」という声と楽屋の喧噪は、ヘンリー・マンシーニによる「黒い罠」のパーカッションやメキシコ国境の喧噪に比うべきサウンドトラックであるし、バンドエイドを貼る=開演は、キス=爆破に比肩する。
 どちらもカットが、ボーダー(舞台/舞台裏、アメリカ/メキシコ)を跨ぐ。
 映画=世界は、異質なもの(舞台/舞台裏、アメリカ/メキシコ)どうしを接着(バンドエイド、キス)し、それを展開(開演、爆破)する。
 

故郷についての3本の作品を撮り終えて、僕は今回初めて自分の映画美学の場を、小さな 町から大都市へと移してみました。そして、僕にとっての“世界”とは、抽象的な概念で はなく、町の片隅そのものなのだと確信しています。  (公式サイトより「Director's Notes」)

     
 北京を出ないで世界を回れる世界公園を、我々は日本を出ないで映画館で回ることができるのだが、そこで我々が見る世界は、北京を出ないで回ることのできる世界ではなくて「世界」なのだ。
 
 
 
  1. 2009/06/01(月) 23:35:25|
  2. 映画感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

著書

プロフィール

中澤正行

Author:中澤正行
撮影監督

主な作品
2006「天使の卵」
同年 第50回三浦賞受賞
2008「あの空をおぼえてる」

Follow Me on Pinterest

メールフォーム

お問合せはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

全記事(数)表示

全タイトルを表示

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。